What's new Aug. 1999


Aug. 30,1999 「人はなぜ失敗するのか」

今朝の日経新聞の春秋に紹介されていたディートリッヒ・デルナー著作の 「人はなぜ失敗するのか」という本の話であるが、モロ族の生活水準を 向上させるシミュレーションゲームで、十分以上に教育のあるプレイヤー の成績が問題になっているそうである。

ゲームは、井戸を掘ったり、保健サービスを行う事で、高い幼児死亡率の 改善や、ツェツェバエの駆虫で家畜を被害から守ったりするのだが、 「目の前にある問題の解決」という、至極当たり前に思える対処法を行うと、 最終的に井戸が使い過ぎで枯れ、増えた家畜は草の根まで食べ尽くすという 更に悲惨な結果を招く事になってしまう。

わし、十分以上に教育があるとは思ってはいないが、今までにやった大抵の コンピュータシミュレーションゲームって、資源の枯渇によって破綻する事 が無いから多分、井戸水は無限と考えて、同じ失敗をしてしまうだろう。 現実では確かに井戸水を使い過ぎれば無くなるだろう。

要は、「目先の問題に因われ、将来を見通す能力に欠ける」という事だそうで 「金融破綻問題も、教育現場の問題もゲームの失敗と同じことだったのでは ないか」と書いてある。

確かにリーダに「先見の明」が無い組織は、坂道を転がり落ちる一方やと思う。 わしの会社がまさにそれで、ソフトウェア開発体制に関して無知であり、 5年前に製造する製品別にソフトウェア部隊を分割するという愚かな戦力分散を やっている。

で、分割直後に「インターネットブーム」ってのが起こって、気が付いて みれば、やってる事は皆同じ。
「使えるTCP/IPのモジュールは無いか?」
「使えるブラウザソフトは無いか?」
「使えるメールソフトは無いか?」
と分割されたソフト部隊は自分のところでは戦力不足で開発できないから、 他人の懐を当てにするという状況に陥った。

そこへ、「拙速は巧遅に勝る」などと、どっかのビジネス誌の受け売りの 様な事を言って、無謀なスケジュールを正当化して、ソフトウェア部隊に 過大な負荷をかけてソフトウェア品質と開発能力の低下に拍車をかけた。

今から考えれば、分割せずに一組織として役割分担してこれらのソフトウェア を内製化をしていれば、今頃は一財産になっていて、素早い製品投入もできる 体制になっていただろう。

最近になって、社長はようやくその失敗に気いたようで、ソフトウェアの 比率を上げると言い出したが、世間から5年遅れている。日本は米国に5年 遅れているという事だから、米国比では10年遅れている。これはきっと ビジネス誌に載っている様な人がやった成功話を安易に踏襲しているから ではないのか? と思ったりする。

ある管理職などは「ソフトウェア開発はやっぱり少数精鋭で無いとダメだねぇ」 と過去の失敗を全く反省する事無く、相変わらず無謀なスケジュールのイケイケ を続けており、ソフトウェア開発能力は低下の一途を辿っている。

わしの価値観としては、失敗経験こそが財産で、同じ過ちを繰り返さない事 が、成功の最低条件だと考える。しかしながら、ここ5年間、所属した部署で 開発の終盤に聞くセリフというのが、必ず「ソフトウェアの品質が…」と 全く変化が無い。愚かな戦力分散の威力は絶大である。

「数こそ力」であるソフトウェア開発を、ビジネス誌の成功体験を猿真似 するじいさん連中が、旧式の製造業的発想で、「人を減らして開発すれば コストが安く済む」と安直に考え、同じ失敗をこの5年間永久ループで実行 しつづけているのだ。

と、ここまでは、ソフトウェア技術者から見た視点だ。

では、ビジネス誌かぶれの経営者の視点で考えると、少数精鋭の開発に傾倒 する対処法を採り続けるのであれば、最終的にはソフトも含めて、外部が 作ったモノをアッセンブリするだけの組織になるだろう。 「拙速は巧遅に勝る」を極限まで突き詰めると、「今ある信頼性のある部品を 素早く組み合わせて市場投入する」という形態になるからだ。

既存の会社で言えば、DELLみたいな形態か? しかし、DELLの猿真似をするに しても、問題としては、売れる製品の企画力と、販売能力の育成に成功するか どうかが生き残れるカギとなるだろう。

売れる製品を販売する能力があるからこそ、部品メイカから安く部品を買い 叩ける。でないと部品メイカに主導権を握られて、部品調達コストが増大し、 価格競争力は低下する。

と、自分の会社の行く末を客観的に考えてみた。要するに、遅きに失する感は あるものの、社長はソフトウェア重視の会社を目指しているが、その下の ビジネス誌ヲタクの役員連中の思惑としては、製造業の成功モデルを安易に 踏襲したがり、ハードウェア重視で、ソフトウェア技術者には殆んど用は 無いという事だろう。

わしとしては、会社の末路がどうなろうと、ソフトウェア企業として、 こんなに立派な反面教師の役員がいる会社はとても有難いと思っている。 同じ失敗を繰り返すばかりで失敗のバリエーションに乏しいのが難点だが(笑)、 これらの人の失敗ぶりを観察するだけでとても勉強になるというものだ:-)。


Aug. 27, 1999 暇だ

わしの上司は結構頻繁に変わる。 わしが、文句言いまくりの厄介者だからだろう。

新しい上司には、だいたいテストを行なう事にしている。 まず、無謀なスケジュールを押しつけてくる事に対し、 「こうすればもっと効率的になるんやないの?」と言うてみる。

これに対して、論理的に説明できず、「とにかく言われた通りにやれ!」 と言ったらもう失格。

以後、わしは面従腹背政策をとる。こういう伝言ゲームの中間の人みたいに 上の指示をスルーするだけの人材は上司として認めない事にしている。

スケジュール管理とやらもしている様だが、無謀なスケジュールを単純に 押しつけようとするだけで、その無謀なスケジュールをこなす為の具体的 解決策をおつむを使って考えるという事すらできず、ただ、労働時間を 増やしてこなせと言うだけ。

二日前程の日経新聞に「日本の製造業の損益分岐点は売上の90%以上」とか いうのが出ていたが、そりゃ、こんな体力勝負大好きの伝言ゲーム要員を大勢 飼ってたんじゃ、部品コストを下げようとも、人件費がやたら増えるだけで、 損益分岐点なんか下げられっこ無いというものだ。

別にこれらの人材をクビにしろと言っている訳では無い。これらの人材が より効率化の為におつむを使えば、残業等の人件費が減って、利益が上がる という事だ。ただ、体質というのはなかなか変わらないんやけどね…

前の職場ではグループミーティングが行なわれていたが、今はそれも無し。 はっきり言って、プロジェクトがどうなってるのかすら全く知らされない ので動き様が無く、やる事が無くて暇でしょうがない。

根拠も無く強気で、体力勝負好きなおやじ連中見てるだけで精神衛生に悪い から、わしとしては給料も減っていいから、拘束時間を2/3程に減らして 欲しいと切に願うところである。


Aug. 20, 1999 相場師宣言

わしは製造業のソフト屋、すなわちプログラマである。

SE では無く、プログラマだ。わしの会社では、SE とは、プログラマに なれなかった人がなるもので、わしはプログラマという職業に誇りを 持っている。

ところが、わしの会社の経営者連中は、製造命で、モノ造りで今の地位を 築いた方々なので、あくまでもハードウェアが主、ソフトウェアはその おまけという認識しか無い。

ソフトウェアについて無理解だから、おのずと評価にしても、休日出勤の 日数や、残業時間、体を壊して健康管理センターのお世話になっているか? 等の体力勝負ネタがポイントとなる。

わしは、体力勝負が嫌いなので、如何に効率を上げて楽をしてサボる かばかりを考えるのだが、そういう体力勝負ネタじゃない事は、この 製造命のおっさん連中には全く理解できないようだ。

そこで、わしはこの経営者連中を見限る事にし、株式の信用取引の 口座を開いて、相場が下がっても利益を出せる体制を作り、本業である プログラマは社会的地位を確立する為だけの副業にして、相場師を本業に しようと決めた。

相場師としての最終利益目標は、会社で得ている年収の二倍。 所得三倍増計画といきたいところだ。
はっきり言ってマジやで(笑)。


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Yuji Noizumi
Last modified: Sat Sep 4 20:07:31 JST 1999