原子力発電所を10年〜20年で廃止しようと主張している政党があるが、果たして可能であるのかと言えば、非現実的だと言わざるを得ない。
太陽光発電に幻想を抱いている人も多いだろうから、「その幻想をぶち壊す!」為にいかに非現実的かを書いてみよう 🙂
拙ブログにて過去に取り上げた「チェーンメール」において、
と書いてあるメールで、その時には書かなかったが、このメールが確実に嘘である事が分かる要素として「電気の備蓄」と書かれている点である。
このチェーンメールの作成者は、携帯電話の充電の感覚で、電気は充電すれば簡単に取り出して使えると思っているかもしれないが、はっきり言うと、「電気は備蓄できない」。
厳密に言えば、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、こたつ、ドライヤーなど、消費電力の大きい家電が駆動できる事を保証し、かつ、発電所の経済効率よりも優れた電気の備蓄はできないという事である。
災害に備え、太陽光パネルとバッテリで電気の自給自足を行えるシステムを構築するには、一体どれくらいの費用が掛かるのかというのを調べた事がある。
継続的に電気を使用する為には、バッテリ放電量<太陽光発電量の条件を満たす必要があり、悪天候による発電効率の低下時に、バッテリのみで持ちこたえられる事が必要である。
悪天候に備える為には、カーバッテリ数十個は必要で、品質劣化対応に数年で交換が必要。その大容量のバッテリを充電するのに、大容量の太陽光発電パネルが必要であるが、これも紫外線劣化で数年から10年位で更新が必要。
電力会社に頼らない自給自足のシステムは、大体、ざっくりとした計算で、数年毎に数百万円位の設備費用が掛かる。これは経済性を無視した災害対策としての設備投資ならアリだが、通常使用する電力としては有り得ないコストだ。
日本はリチウムイオン電池など、優秀な蓄電池があり、携帯電話にもこの電池が使用されている位だから、この高性能な電池を使用すれば良いじゃないかという話もある。
しかし、一般家庭の電力を賄えるリチウムイオン電池は1個1億円であり、数年毎に1億円という馬鹿げたコストになる。
量産効果で価格が下がれば、可能性はあるかもしれないが、リチウムはレアメタルであり、原材料コストの大部分はこの希金属が占めている。
簡単な例で言えば、純金の像を量産して、果たして劇的なコストダウンが見込めるか? と考えると、いかに望み薄であるかが分かるだろう。
現在の技術では、とてもではないが太陽光発電で原発に代替するというのは不可能で、その技術も確立していない段階で、大幅な技術革新を前提として、10年〜20年で原発をゼロにするなどという大言壮語は、極めて無責任と言う他無い。
ハイテク産業を擁してきた日本は、安定した電力を失えば、経済的な大打撃を被り、失業者の増大で、貧困層が益々拡大する事だろう。
いつ起こるか分からない原子力災害に怯え、困窮して飯が食えず餓死するなどというのは本末転倒で、感情で否定するのでは無く、もっと現実を見据えた実現可能な電力供給を考えるべきだろう。