何がですか?

今日は未払金の支払いだったが、ネットバンキングで支払先登録が増えたため、等比級数的に処理スピードは上がり、1時間で振込みと仕訳が終わった。

夕方に上司が「どこまで進んでる?」と言ってきたので、恐らく、できてないと自分が怒られる事になる月末処理の事だろうなと思ったが、万が一、未払金支払いの事を聞いている可能性もあるので、

「なにがですか?」

と聞きなおすと、「月末処理」との事なので、「今日か明日にはできます」と言うと「そうか」と言って帰って行った。

「経理責任者」と言われている上司だが、未払金の支払いが漏れ無くキチンとできたのかというのは気にならないようだ。

もしかしたら支払いの事は綺麗さっぱり忘れてしまっていて、わしが上司の問いに対して「何がですか?」と言ったのは、わかっているのにとぼけて嫌がらせしていると思ったかもしれない。

最近、わしに対して、余り話しかけてこなくなった上司であるが、出入りしている業者には、非常に横柄でぞんざいな態度で話す。

その業者は、過去に上司の失敗のフォローをして貰ったりしていて、上司にとっては恩人のはずの業者なのだが、「業者を使ってやっている」という感じで、自分が上の立場だというのを顕示するかのようだ。

色々と断片的な情報から上司の人物像を推測すると、上司は今の自分の立場や地位に満足していないようだ。

事務所内の殆どの職員は、上司が自分の仕事のテリトリに入ってくると、仕事がいい加減である為、地位に応じた職責を果たすように苦言を呈すので、そういう人には、上司は面子を潰されると思うのか、話をしたがらない。

必然的に出入り業者や営業担当など、上司に強く言えない立場の人に対して、よく話すようになるが、事務所職員から白眼視されている反動からか、自分の立場が上であるという事を顕示しようとする。

わしに「どこまで進んでいる?」と聞いたのは、出入り業者と話した後で、恐らく、丁寧に扱って貰えて、大層気分が良くなっていたのだろう。

そして、わしが「月末処理が遅れている」と言ったら、叱責して自分の立場が上であると示すつもりが、ほぼ予定通りで、期待外れだったので「そうか」とだけ言ってそそくさと帰ったというところだろう。

別の上司なら、
「先月より格段に処理が早くなってるな」
「先月は完成から経営会議まで期間が短かったから苦労したぞ」
「これからもこの調子で頼むぞ」 

と、いうようなやり取りになるだろうし、わしが上司の立場だったらそう言う。人に自分の思い通りに動いて貰おうと思ったら、その人が気持ち良く動けるようにコミュニケーションを取る事が大事だと思う。

職務遂行が主目的で無く、自分を必要以上に大きくみせようとする事に汲々として、他人を決して褒めず、逆に貶す事で相対的に自分を上に見せようとする人には、人に気持ちよく動いてもらうとか、人望を得るとかいうのは、どだい無理な話だろう。

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